コラム

みどりのThat's録 馬に対してのアニマルウェルフェア

年月の経つのは早いもので、馬と関わるようになって44年が過ぎました。 始めは何かに導かれるように日本で乗馬を経験して、スポーツというより馬という動物そのものに強く惹かれたのを思い出します。グリーンウェイランチを立ち上げる前は、約20年間日本の乗馬クラブでお手伝いをしながら日本独自の乗馬クラブの形態や、それが変化していく様子を肌で感じて日本の乗馬歴史を垣間見る事ができました。 

私が乗馬を始めた頃はサラブレッドに跨りながら「ブリティッシュスタイル」で学び、その後日本がバブル景気で盛り上がり始めると、クォーターホースという品種がアメリカから輸入されて「ウェスタンスタイル」と称する乗馬方法が一部の乗馬愛好家の興味を引き、アメリカ産の馬具をクォーターホースに装着したカウボーイスタイルの乗馬が注目を浴びました。 これは1980年代頃の話で、今ほど日本の乗馬施設は存在せず乗馬は身近なスポーツとは言えない時代でしたが、バブル景気に勢いを受けて例えは悪いですが、“十把一からげ”感覚で沢山のクォーターホースが輸入された時期でもありました。

これは、ほんの一例に過ぎませんが馬が乗用馬として日本人に親しまれていく過程を回顧してみると、馬が人間の歴史に関与して人の生き方まで変えてしまう不思議、そして馬そのものの生き方も変わっていく不思議を感じます。 私のように馬と巡り合ってから馬中心の生き方をしていく人を見てきて思う事ですが、人と関わる多くの動物の一つとして馬の存在を思うに至り、人が飼育管理してきた計り知れない数の馬たちの生かされ方は幸せだったのか・・・、様々な場所で様々な馬を見てきて「否」と感じる飼育方法やその馬の終末を思い出すととても心が痛む時もあります。重い病気や重篤な怪我をして回復が困難な場合は、人による生か死の選択もやむを得ない場合がありますが、それを人為的に行う時は馬に恐怖感や苦痛を与えない方法を選ぶべきです。

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馬は大きな動物ゆえに、人と共に同じ空間を共有できる小動物とは異なる感覚で付き合う必要があると思います。 絶えず身近にいる生き物であれば、彼らが安らぐことのできる環境を理解し作る事ができる反面、人の飼育下にいる馬がどのような環境であれば安らげるか理解するには時間と経験を要します。時に人が馬に対して思う気持ちが「愛し、大事にすべき生き物」ではなく、「扱いに労働が伴う経済動物」としか見てない人もいるようで複雑な気持ちになる事もあります。 馬は小さなミニチュアホースから大きな重種を含むと200種類以上と言われ、人が馬に与える用途も体格や気質、種類によって様々なので一概に独自の理論は止めておきますが、最後に最低限人が飼育する馬に対して心を配るべき内容を記したいと思います。

これから書く内容は、ちょうど100年前に未開発の国で使役に使われ、過酷な扱いを受けてきた動物を擁護するための活動に基づいたもので「動物愛護」という言葉から想像するより、具体的かつ現実的で教育要素を含むものです。 この活動は100年という年月を歩みながら幅を広げて、現在では使役用の動物に限らず、食肉目的の生き物、動物園などにいる鑑賞用の生き物、繁殖目的で飼育される生き物、実験に使う生き物など、人間が様々な目的や都合で枠にはめて飼育する多くの種類の生き物を対象としています。 ここでは人の飼育下で暮らす馬が日々幸福感を得られるように、馬独自の習性や本能を考慮しながら書かれたものを記してみました。

馬に対してのアニマルウェルフェア(Animal Welfare)

1.絶えず新鮮な水が飲める状態にしておき、健康かつ活動的でいられる飼料を与える。

2.心地よく過ごせる環境下で、悪天候などから身を守り、居心地の良い空間を与える。

3.病気や怪我などの痛みを抑え、必要な治療を行う

4.精神的な苦痛や恐怖をもたらすような扱いはしない

5.安全で十分なスペースを与え、馬同士が共にくつろげる環境を作る

※藤本みどりさんが提唱する馬に対するアニマルウェルフェアです。

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プロフィール 藤本みどり

上智大学卒。馬に携わって40年。ブリティッシュスタイルで乗馬を経験し、後にウェスタンライディングに転向してウェスタン馬術のレイニングを始めました。1999年に渡米。本格的なレイニングホースの調教を学びながら競技会出場の経験を重ね、2006年にノースカロライナ州スミスフィールドにて乗馬施設、グリーンウェイランチを立ち上げました。

良い馬作り、良い乗り手の育成を目標に、現在は乗馬指導と牧場で生産した馬の調教に励んでいます。グリーンウェイランチでは初心者をはじめ、トレーナーを目指している方や競技会に出場を希望する上級者などのレッスンを含め、様々なご要望にお応えしています。

グリーンウェイランチでは鶏も飼っており、アニマルウェルフェアに則った管理がされている。
鶏は開放的な環境で飼養されている。

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グリーンウェイランチ公式ホームページ
https://www.greenway-ranch.com
※この記事は当団体が発行するフリーマガジン「馬旅2024秋号」の一部です。

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