コラム

馬の異状を検知する AI プロダクト「aiba」の開発者をインタビュー

馬の異常を知らせるAIプロダクト「aiba」とは?

2023年11月、AI エッジカメラを使用した検知ソリューションを展開する株式会社アプリズムは厩舎で馬の異状をリアルタイムに検知する AI プロダクト「aiba」をリリース。開発に至るストーリーや機能について開発チームの皆さんにお話を伺いました。

きっかけは大学馬術部の息子の姿を見て

プロジェクトリーダーの息子は大学馬術部に所属。限られた部員数で馬の世話をする 必要があり、宿直で週に 2〜3 回は泊まり込み日中も担当馬に何かがあれば駆け付けな くてはならず、授業に支障が出る心配もありました。そんな一般的なキャンパスライフと程遠い姿を見て、自社のAI技術でなんとかできないかという想いが開発のきっか けとなりました。

親心から社内プロジェクトへの道のり

まずは大学や乗馬クラブに協力を仰ぎ、厩舎の動画を収集するところからスタート。 アノテーション(=AI に学習させる)には、画像にすると2万枚以上分もの動画が必要です。人間の目線ではなくカメラを設置する厩舎の高い位置から見た馬をAIに認識させるのは世界にも前例が無く大変な作業でした。

次に「馬のどんな動きをもって異状とするか」という問題があります。乗馬クラブの経営者、獣医、馬術部の部員など異なる立場の方々から話を聞いたところ共通して出たのが「疝痛(せんつう)」でした。

 

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疝痛の原因はさまざまですが、死に至ることもある異状です。疝痛があると馬は前か きをしたりクルクル回ったり普段と違う行動をする。これを分析して学習用の異状と していく方針を決め、過去に撮った動画から認識させるプログラムを組み......というところまでにかかった歳月が約1 年です。

実は、ここまでは「AIでこういうことができる」ということを社会に示したい気持ちが大きく商業化は考えていませんでした。しかし社内で「困っている人が助けられるのでは」というメンバーが出てきて、製品化へ向けてプロジェクトチームが立ち上がる事になりました。

馬着のある馬やずっと後ろを向いている馬もAI に認識させなければならず、そういった問題を1つずつクリアしながらリリースに至るまで計2年の年月がかかりました。

馬業界初AIエッジカメラによる厩舎管理へ

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AIでの異状検知という技術面はクリアできる目処が立ち、具体的なソリューションをどうするかの段階へ進みます。異状を検知したらユーザーへ何をどう届けるのかが最後の開発ステップでした。 AI が異状を察知するとアラートを発信して厩舎モニターやスマホ、スマートウォッチでもわかるようにしました。リアルタイムで誰が対応可能かをチャット形式で相談できるようにシステムを設計、対応した結果をボタンや自由テキストで共有できます。 ドライブレコーダーのように異状を検知した前後の動画を見ることも可能です。

利用に大掛かりな設備は必要ありません。一般的な厩舎のサイズ感で馬とぶつかる心配のない高さなら電源さえあれば AI エッジカメラは設置可能です。

お申し込みから設置までは約2ヶ月。私たちはただ売りたいだけではありません。事前に現地へ伺いきちんと効果を出せるのか、安全に設置できるかなど確認をしてから設置へ進めます。カメラが壊れた場合は追加料金なしで交換の対応が可能です。

バージョン1の完成とこれからの展望

現在はバージョン1がリリースされ、2024 年夏までにはカメラ台数を増やして取得できる情報を増やしたバージョン2のリリースを目指しています。 その先のバージョン3では異状検知だけでなく馬のトータルコーディネートを目指しています。餌の量、運動量、厩舎内での行動などから馬の健康管理を行いたいという考えです。

私たちはただ利益を追求するのではなく、システムの設置後も厩舎へ訪問して様子を伺うような継続的な関係を築きたいと考えています。

馬の異状行動が実際にAIで感知できた時の感動は忘れられません。開発のきっかけは 馬のお世話で大変な子どもの助けになりたいというだったのがことだったのが、本当にいいものをつくりたいというエンジニア魂に火がつきプロジェクトチームが発足、たくさんの方々からニーズを伺って将来的にはアニマルウェルフェアへも繋がるソリューションを産んだのです。

AIは医師ではないので診断することはできません。しかし、異状検知から疝痛を早期 発見して治療することができれば、今まで助けられなかった命を助けられる可能性があります。今後はさらに精度の高いサービスにより馬事業界の発展に貢献していきたいです。

aiba 公式ホームページ
https://aiba.solution.apprhythm.ai/

インタビュー相手 株式会社アプリズム
取材・文 馬旅編集部
※この記事は当団体が発行するフリーマガジン「馬旅」の一部です。

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